8月から9月、連続した日米英蘭の共同訓練 その2


パシフィック・クラウン演習参加の各国海軍艦船の上空を飛行する空自AWACSと戦闘機(21.9.3 空自FBより)

パシフィック・クラウン演習 VとW
 「パシフィック・クラウン」の3回目は9月2日から7日であるが、空母QEは4日から8日まで横須賀に寄港していたから、実質的には9月2日から4日までということか。
訓練内容は「対抗戦、防空戦、対潜戦」と具体化した。今回からカナダのフリゲート艦ウィニペグも参加。海自はヘリ空母「いせ」、イージス艦「きりしま」に加えて、護衛艦「おおな み」など計7隻、潜水艦1隻、哨戒機1機など参加部隊を増強した。
空自はF-15戦闘機8機、F-2戦闘攻撃機4機、F-35Aステルス戦闘機2機、さらに早期警戒管制機E-767、空中給油機KC-767を動員した。
しかし、実施区域を見ると海自は「東シナ海から四国南方を経て関東南方に至る海空域」と発表し、空自は「四国沖及び関東東方の太平洋上の空域並びに横田基地」と発表した。つまり、 艦艇は東シナ海まで出て行ったが、空自部隊は東シナ海には行かず、四国沖から参加したということになる。これは何を意味しているのだろうか。
空自は戦闘機部隊を東シナ海に派遣するという、中国を刺激することが明確な訓練への参加を回避したということだろうか。
9月4日、空母QEの横須賀入港に際しては、この訓練に参加した護衛艦「おおなみ」が先導役を務めていた。4日は東シナ海で海自補給艦「ときわ」とイージス駆逐艦バリーとの洋上補給 訓練も行われた。ともに横須賀配備の艦艇である。


空母クイーン・エリザベス横須賀入港の翌日、海自横須賀基地に並ぶ「いせ」「おおなみ」「たかなみ」(21.9.5 木元 撮影)

 「パシフィック・クラウン」の4回目は9月8日〜9日。海自はヘリ空母「いずも」と「いせ」を参加させた。イギリス海軍は、空母QEを挟んで「いずも」と「いせ」の3隻が並走する写真 を公開した。


英空母クイーン・エリザベスと並走する「いずも」と「いせ」(21.9.9 ROYAL NAVY ホームページより)

中朝の反発と行動
一連の共同訓練は9月9日に終了した。翌10日には奄美大島東方の接続水域の外側を中国のものと見られる潜水艦が潜没航行し、その近くを中国のイージス艦が航行した。中国海軍が潜水艦とイージス艦の組み合わせで日本近海を航行したのは、私の知る限り、はじめてのことである。11日には中国海軍最新鋭のレンハイ級イージス艦「南昌」(満載排水量13,000トンで「まや」よりも大きい)、ルーヤンV級の「貴陽」(満載排水量7500トン)、フチ級補給艦(満載排水量23,369トン)の3隻が種子島の東約140キロの海域を通過した。一方、朝鮮は11日、12日と巡航ミサイルを、15日には弾道ミサイルを発射した。中国と朝鮮のこうした行動は、約1ケ月続いた日米英蘭の巨大な軍事行動に対する反発と見るべきではないか。「自由で開かれたインド太平洋」戦略の下で続いたかつてない連続訓練はアジアの緊張を激化させただけである。そうした結果を引き受けなければならないのはアジアに生きる日本であるという深刻な現実をしっかりと見つめなければならない。まさに、「砲艦外交ではなく、平和的な外交」こそが求められているのである。
なお、原子力空母カールビンソンは9月11日現在、南シナ海で作戦行動中である。(その3・一覧表に続く)

(木元 茂夫)


2021-9-19|HOME|